嫌な言い方になりますが、2015年4月からのTVアニメをもって
この「放課後のプレアデス」という作品を看取るつもりでいました。
スバルの企画担当者が退社したことによるプロジェクトの遅延と凍結の危機。
ガイナックスからのスタッフ大量離脱と、それに伴う近年の元請作品の品質の低さ。
「期待したいけど、期待出来ない。だから期待はせずに、生温く見届けよう。」
そんな複雑な気持ちのまま放映を見始めました。
……正直、ここまで深い余韻を残す作品になるとは想像さえ出来ませんでした。
確かに、至らない点はいくつかあります。作画は立体的な造詣が巧く描けているとは言い難いし、
専門的過ぎる天文・宇宙描写や台詞とは裏腹に、昨今の主流である饒舌な作りをしていない為か
若い層を中心に『分かり辛い』という声もそれなりに聞こえました。
確かにYoutube版自体も尺の都合とは言え決して分かりやすい作りではなかったし、
それを再構築したTV版の導入は、未見者を振るい落とす、ある種Youtube版を見ていること前提の作りだったようにさえ感じます。
しかし4年前に蒔かれた種は、時間と媒体を越えてしっかりと芽吹き、花を咲かせました。
贔屓目に見ても人を選ぶ作品です。もっと言えば世代を選ぶ作品かもしれません。
まさか2015年という時代に、2015年のガイナックスが、こういったアニメの作り方が出来るとは思ってもみなかった。
すばるたち登場人物の感情を言葉で書き、作画で見せ、内面の奥行きと移り変わりを演出で表現し、役者が魂を乗せる。
美術が世界を、3DCGが世界観をそれぞれ形作り、音楽がそれを後押しする。
個々の質で比べたら、過去にも同クールにもこれ以上の作品は山ほどあった。
だけれどこれは間違いなく、バラバラの個々の力が集まり、30分×全12話というフォーマットを遵守して作られた、集団作業としてのTVアニメーション。
芯のある賑やかさと寂しさを兼ね備え、1話から最終話までぶれることなく細い線を手繰り合わせて1本の道を作った
佐伯監督はじめスタッフ・キャストの皆様に心からの拍手を送ります。
最終話以降の彼女らの未来は、決して希望だけの可能性ではないのだろうけれど、
一時交わった放課後の、あの賑やかで儚い時間が彼女らの行く末の光になることを願って止みません。