中国・軍事パレードに「のこのこと」出掛けていく国連事務総長の主張、菅官房長官が瞬殺
2015.8.31 20:58
菅義偉(すがよしひで)官房長官は31日の記者会見で、国連の潘(パン)基文(ギムン)事務総長が3日に北京で行われる抗日戦争勝利記念の行事に出席することについて「国連は中立であるべだ。国際社会の融和と発展、未来志向の姿勢を強調することこそ、国連に求められている」と強い不快感を示した。国連の役割を「世界唯一の真に普遍的な機関」とする潘氏だが、その姿勢は国連の中立性に疑義を生じさせている。
菅氏は記者会見で、「いたずらに特定の過去に焦点を当てるのではなく、未来志向の姿勢をとるよう促すべきだ。国連には190カ国以上が加盟している」と述べた。言葉を選びながらも、潘氏の「軽率な対応」(官邸筋)を強く牽制した格好だ。
日中は現在、歴史認識問題を抱え、時に深刻な外交問題にも発展する。さらに、中国の軍事費膨張や東シナ海・南シナ海での高圧的な海洋進出などへの懸念から米欧首脳が出席を見送り、各国で行事への対応が分かれている。
そもそも、国連憲章が定める国連の目的には「諸国間の友好関係を発展させる」と明記されており、外務省幹部は「この状況で国連トップの出席が、友好関係の発展に必要なのか大いに疑問だ」といぶかる。
ましてや「加盟国はいかなる国に対しても武力による威嚇もしくは武力の行使を慎まなければならない」とうたっている国連のトップが、軍事パレードに「のこのこと出掛ける」(外務省幹部)ことは、自己否定以外の何ものでもない。
それでも、抗日行事への出席にこだわる潘氏について、日本政府内には、韓国の次期大統領選につなげる政治的パフォーマンスとの憶測すらささやかれる。
また、創設70年を迎える国連には安全保障理事会の改革という課題もある。安保理の常任理事国は固定されていて、日本やドイツ、インド、ブラジルなどが組織改革を求めている。
元米国務省幹部は「常任理事国にはアフリカの代表や経済大国の日本、それにインドもいない」と国連組織における中立、公平性が課題であると指摘する。
潘氏は日本が行事出席への懸念を示したことに、「国際社会にとって過去から学び、前進することは非常に重要だ」と反論した。これに聞いた菅氏は「国連は特定の過去に焦点を当てるべきではない」と記者会見で繰り返し、潘氏の主張を一蹴した。